ウェルシュ・コーギ・ペンプローク Welsh Corgi Pembroke
 日本でも10数年前に人気犬種の仲間入りをしたコーギは、もともとウェールズの牛追い犬。牛の群れを牧草地や市場に移動させるのが「ヒーラー」と呼ばれる彼ら牛追い犬の任務でした。体高(地面から首の付け根まで)30?程度という小さな身体で大きな牛たちをコントロールするために彼らがとった方法は「かかとに噛みつく」というもの。「かかと=heel」から「ヒーラー=heeler」という別名が付きました。がっしりとした体つきで短足胴長。短足仲間のダックスフントは猟犬ですが、コーギのこのスタイルは、ちび犬にうるさく追い立てられてイラッとした牛たちから後ろ蹴りを食らわないためのものなのです。タフな職場で働いてきただけに、パワーもガッツも犬一倍。でも、家族には友愛と忠誠を惜しまない牧畜犬気質です。
 そんなコーギたちの生活を一変させたのが、現英国女王エリザベス2世との出会いでした。1933年、『ドーキー』という名のコーギを愛犬として迎えて以来、女王はこのキツネ顔の牛追い犬に魅せられ、王室のコンパニオンドッグとしてきたのです。ロイヤルドッグになったといっても、コーギたちの身体にはまだまだヒーラー魂が健在。バッキンガム宮殿でも、牛の代わりに近衛兵数名、警察官、王室付き時計ねじ巻き係らにガブリとお見舞いしたばかりか、仲間内のケンカを仲裁しようとした女王その人に噛みつくと言う暴挙にも(国王反逆罪だそうですが、無罪放免された模様)! およそ王宮には似つかわしくない犬たちですが、それでも女王の寵愛は変わらず、80年以上にわたってロイヤルドッグの地位を保っているのです。
 ちなみに、BBCの人気ドラマ『シャーロック』にもコーギが出演していたのはご存じですか? 出演といっても「毛」だけですが、第2シリーズの第1話『ベルグレービアの醜聞』で、迎えに来た使者のズボンに付着した毛から、シャーロックは行き先を推理しますが、あの毛はまさしくコーギの毛!というわけです(なにしろ依頼主が女王様なので)。
 ペンプローク地方出身のウェルシュ・コーギ・ペンプロークが母国でも日本でも有名ですが、同じウェールズ南西部のカーディガン地方出身のウェルシュ・コーギ・ペンプロークも家庭犬として人気です。カーディガンの方がやや胴が長く、毛色は暗色、顔つきも違います。最大の違いは、ペンプロークには生まれつき尻尾がないことが多いという点です。